エッジコントローラは、インダストリアルIoTにバランスをもたらすのか?

自動化のデジタル化は続いています。自動化の非常に初期の事例は、蒸気で稼働し、リンク機構で伝達し、調速機で制御していました。しかし、電動化により制御は変化しました。時を待たずして、電動化により機械の動作の発生と伝達の再定義が必要となりました。
現在、電子制御システムは、純粋な機械式システムではできなかった形で、動作と効果の流れを完結しています。
簡単に言うと、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)は、事前定義のロジックを1つまたは複数の入力に適用して、1つまたは複数の出力状態を設定します。PLCは自動化と同時に進化してきましたが、事前定義の性質は重要性が増し、差別化をもたらしました。これは設計により機能が固定されるため、PLCの耐用年数の間は変化しないことを意味します。接続性は即時性の要求をもたらし、産業制御の柔軟性と即応性は増しています。
古典的なPLCの簡素性は意図的なものです。設計の意図は、単調でも確実に機能させることです。しかし、進歩により要求が増しています。インターネットおよび特にIoTは、接続デバイスがよりスマートに機能することを求めます。また、接続ソリューションが素早く柔軟かつ安全に機能することも求めます。このような機能は、PLCが考案されたとき、必須機能として優先度が高くありませんでした。
現代のPLCは、接続を増すことでこのような要求に対応しようと奮闘しており、今後何年にもわたり多くのOEMのニーズに対応することでしょう。しかし、より多くの処理能力をネットワークのエッジに移行する一般的な傾向は、制御システムの開発方法に影響を与えつつあります。
インダストリアルIoTのハードエッジ
産業プロセスの出力段階よりも、ネットワークのエッジに近いものを考えることは困難です。ここは、文字どおり概念が事実となる場所です。これは、頑丈で高い信頼性が求められるハード・リアルタイムの制御システムの分野です。
逆に言うと、接続の増加により、クラウド処理のリソースは、エッジで生成されるデータの分析を引き継ぎつつあります。これは1つの問題を明らかにします。エッジは大量のデータを生み出し、クラウドへの移行がコスト高になっています。また、クラウドはリアルタイムではなく、相対的に送受信にかかる時間が非常に不規則です。現在、TSN(Time-Sensitive Networking)などの技術がこれに取り組んでいます。TSNの詳細に関して、「シングルペアのイーサネットはIIoTに何をもたらすか?」をご覧ください。しかし、多くのリアルタイムシステムにとって、決定的なレイテンシーの欠如はクラウド処理が産業プロセスにもたらす価値を制限します。
ここで登場するのが、クラウドの処理能力をネットワークのエッジのデバイスへ移行するエッジ処理です。性能と能力を差別化することは重要です。現在のCPUでは、クラウドで利用できる同等の性能をエッジデバイスへ移行することは不可能です。しかし、データの分析に関しては、一定の処理能力をエッジへ移行できます。
エッジコントローラは、IT(情報技術)分野とOT(運用技術)分野が出会う場所です。産業用PCなど他のプラットフォームは、よりIT側に重点を置いています。PLCおよびPAC(プログラマブル・オートメーション・コントローラ)は、まだOT側に重点を置いています。これにより、ITの能力とOTの能力に不均衡が生まれます。
しかし、エッジコントローラは、ITとOTのバランスが取れたソリューションを提供します。エッジコントローラは、両側の技術者を満足させる形でそれを達成する場合にのみ成功します。
エッジコントローラはITとOTの適切なバランスを取ります
このバランスを取る方法はたくさんあります。1つのアプローチは、2つの異なるシステムを開発し、何らかの共通プロトコルを使用してデータを交換する方法です。もう1つは、仮想化を備えた1つのプラットフォーム を使用する方法かもしれません。これにより、両側を分離して接続できます。
エッジコントローラを導入する1つの方法というものはなく、複数のCPUを伴う可能性があるため、おそらく複数のOS(オペレーティング・システム)を使用することになるでしょう。OT側はほぼ確実にリアルタイムであり、さまざまな産業プロトコルを使用して、確定的なオペレーティング・システムが制御を担います。IT側は、自己の言語を使用してクラウドおよびサーバーとインターフェースを取る必要があり、これはイーサネットで通信することを意味します。両側の接続に使用される仕組みが不可欠です。
現在、産業アプリケーション向けの異種のマルチコア処理アーキテクチャを使用することができ、これは適切なプラットフォームをエッジコントローラへ提供するために設計されています。この高度に統合されたデバイスは、非確定的な処理を扱うためのアプリケーションクラスのCPU、およびリアルタイム制御用の有能なマイクロコントローラを備えています。
ルネサスのRZ/N1システムオンチップ(SoC)ファミリーが良い例です。このSoCグループには、Arm Cortex-A7 MPCoreサブシステムを搭載したバージョンが含まれています。このサブシステムは、Arm Cortex-M3と併せてシングルまたはデュアルA7コアが統合されています。RZ/N1は、複数のプロトコルを備えたシステムにとって有効なプラットフォームとなります。ゲートウェイやエッジコントローラなど、現代の産業制御ソリューションがそうです。
RZ/N1をサポートするさまざまなソフトウェアが、ルネサスおよびそのソフトウェアパートナーから提供されています。この中には、ドイツのリアルタイムソフトウェアの専門企業であるPort株式会社のミドルウェアが含まれています。Portは、産業アプリケーション向けにGOAL(汎用オープン抽象化レイヤー)通信ミドルウェアを開発しました。RZ/N1用のGOALバージョンは、Cortex-M3のオペレーティング・システム用のハードウェア加速化ブロックであるHW-RTOSを含め、SoCの多くの機能を使用しています。HW-RTOSの詳細に関しては、「データシートの背後にあるもの: HW-RTOS」をご覧ください。
ソフトウェアのサポートは、CODESYSおよびそのOPC-UA(オープンプラットフォーム通信統一アーキテクチャ)からも得ることができます。これはインダストリアルIoTにおける、SOA(サービス指向アーキテクチャ)への変化も明らかにしています。SOAのインダストリアルIoTへの導入方法の詳細に関しては、「IIoTにおけるサービス指向アーキテクチャのサポート」をご覧ください。



